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ハロー軌道での Natural Formation Flight

1.はじめに
 TPF-I ミッションのように太陽-地球系 L1 or L2点で編隊飛行する計画が検討されている。TPF-I は常時推力を発生させて formation を維持する計画であるが、本記事では、推力を用いないで、太陽-地球系 L1 or L2点ハロー軌道でどのような編隊飛行が可能であるかを紹介する。推力を用いないで可能な編隊飛行を natural formation flight と言う。複数の宇宙機がある程度の範囲に適当に分散して飛行するだけで良いミッションには好都合な formation flight であろう。
 本記事では、図1 に示した宇宙機 A,B,C の3機の natural formation flight を、L2点で展開して得た線型解を使って検討する(文献(1))。特に、基線AB, AC, BCの変化に着目して。そして、最後に、別の natural formation 軌道である quasi-halo orbit (準ハロー軌道) について紹介する。文字が鮮明でない図は、図の上でクリックすると、もう少しクリアな図が表示される。
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2.L2点近傍の線型周期解
 初めに、L2点近傍の線型周期解を示す。導出は、文献(2)を参照して戴くとして、ここでは結果のみ示す。以下では、特に指定しない限り、以下の基準値で無次元化した無次元量を使用する。
  長さ:1AU (=1.49597870 e11 m)
  時間:1年/(2π) (=365.25636日/2π=58.13235519日)

 図1 の座標系により、L2点近傍の周期軌道は次式で表わされる。
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α1、α2、β1、β2は積分定数。BL、Cy1、λp は、天体系に依存する定数であり、太陽-地球系 L2点の場合は、以下の値となる。
   BL=3.940522189 、λp=2.057014192、Cy1=3.18722929
 t=0 において、y=0, z-dot=0, z>0 とする(図1 の A)。すると、(1)式より、α2=π, β2=0 となる。従って、図1 の宇宙機 A の運動は、次式で表される。
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線型解では、λp と sqrt(BL) とは僅かに異なるため、(2)式の周期解はハロー軌道ではなく、リサジュ軌道となるが、おおよその傾向は掴める。図2~5 に、y 方向のサイズ(半径) Ay が70万km の trajectory と速度を示す。
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3.3つのアーム長とその変化率
 本章では、宇宙機 A, B, C で作られる AB, AC, BC という3つのアーム(基線)の長さとその変化率を示す。基準となる宇宙機 A のハロー軌道の Ay は 70万km とする。図6と図7に、各アームの長さとその変化率を、初期アーム長 L0 (図1 に位置におけるアーム AB とアーム AC の長さ)で割った値として描いた。
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 図6 を見ると、相対距離は、1 周の間(約180日) に平均値の周りに±50% 程度の大きな変化があるが、図7より、相対距離変化率は、アーム長 100m に対して、4e-5m/s 程度の大きさに過ぎない事が判る。L0≒100m の TPF-I の光干渉計ミッションに適用した場合、無推力の下で相対距離変化が 10cm 以下に留まる最小時間は、約42分間となる。TPF-I は、以前の記事で紹介したように、14 時間周期で回転させるような複雑な運用をするようなので、ここで示した natural formation flight は使えないが。

4.補足
 最後に、ハロー軌道のもう一つの natural formation flight 軌道を簡単に紹介する。文献(3)の27頁に載っている下の図が、それであり、準ハロー軌道 (Quasi-Halo Orbit) と呼ばれている。これは、従来のハロー軌道を包むような形のトーラスの表面を飛行する軌道であり、2つの周期を持つ。ハロー軌道を飛行する宇宙機と、その近傍の準ハロー軌道を飛ぶ宇宙機との相対距離は、最大値/最小値の比が、約 4 程度の変化をするようである。
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参考文献
1)歌島, “ハロー編隊飛行の線型解析,” JAXA技術資料 BDC-06015, 2006年.
2)歌島, “ラグランジュ点近傍の軌道力学,” 宇宙開発事業団技術報告 NASDA-TMR-960033, 1977年3月.
3)Jerrold Marsden, Wang Koon, and Martin Lo, “Dynamical Systems and Space Mission Design.
by utashima | 2007-02-03 15:15 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)


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