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オール電化推進系の静止衛星のGTOからGEOへの軌道変換(その3)

2.Super Synchronous 軌道からの出発への対応
オール電化推進系の静止衛星のGTOからGEOへの軌道変換(その3)_c0011875_1382781.jpg 初期軌道の遠地点半径を、GTO (近地点高度 500km、傾斜角28.5度、遠地点半径42166km) のそれより更に高くして行くと、問題が発生する事が予見された。初期軌道の ΔRa (遠地点半径-静止半径(42166km)) が大きくなると、長半径が静止半径を超えるようになる。ΔRa が 35288km の時、長半径は静止半径に等しくなる。これ以上の ΔRa の軌道では、Ga を 1.0 に固定したアルゴリズムでは解は得られない筈。その場合に備えて、Ge を-1.0 に固定し (離心率を常に減少させる)、Ga を最適化パラメータとする OPT4C も作成した。ΔRa が 3万km 程度以上になると、OPT4C を使う必要があると考えられた。

 図2に、初期軌道の ΔRa を、-1.5万km~6万km まで変えた時の解における、軌道長半径と傾斜角の変化を示した。特に、軌道長半径の変化(左軸)に注目。赤色が、GTO からの出発の場合である。ΔRa が 3万km 以上に対しては、予想通り OPT4C を用いなければ収束しなかった。

3.複雑な蝕パターンの時の問題点
オール電化推進系の静止衛星のGTOからGEOへの軌道変換(その3)_c0011875_13401069.jpg 初期軌道が傾斜角 22 度の GTO の場合に、収束しないという問題に出くわした。初期傾斜角が 28.5 度では収束しているので、その解を用いて初期傾斜角 27 度の問題を解き、更にその解を用いて初期傾斜角 26 度の問題を解くと言うようにして、段階的に 22 度の解を得ようと考えた。然しながら、27 度の解は求められたが、それから先には進めなかった。終端条件 (軌道長半径a=静止半径、離心率e=0、傾斜角i=0) はほぼ成立しているが、面内制御 (a, e) より傾斜角制御が早く終了してしまう。最適制御からずれている証拠である。

 そこで、軌道変換期間における 1周内の蝕期間の変化をプロットしてみた。それが図3 である。経過日数 130 日付近で、初期傾斜角の違いにより、蝕期間が大きく変わっている事が判る。現時点では、これが原因と考えている。OPT4B, OPT4C では放射線による劣化も考慮しており、そのアルゴリズムにおける大きな非線形性が収束性にかなり負担を掛けている事が判っている。その上に、蝕に起因する推力のオン・オフのパターン変化が悪影響を与えているのであろう。
 このようなミッションの本格的検討に際しては、非線形性を軽減した放射線劣化モデルが必要と思われる。

4.今後の課題
 ここまで、理想的な場合を想定して解析してきた。然しながら、最適解が要求する時々刻々の推力方向の実現と、太陽電池パドルを常に太陽方向に正対させる事は、必ずしも容易ではない。特に、従来の静止衛星からの変更を最小限にしようとすると、大きな制約が課せられる事になる。コスト低減のために、電気推進系のスラスタを南北保持制御と共用しようとすると、GTOからGEOへの軌道変換時には、ある程度の効率低下は避けられないであろう。
by utashima | 2006-12-02 15:01 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)


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