2006年1月頃から「オール電化推進系の静止衛星」の GTO (静止トランスファ軌道) から GEO (静止軌道) への軌道変換の検討を行なった。「オール電化推進系の静止衛星」というのは、現在の静止衛星の複雑な推進系(有害なヒドラジン等を使用する推進系(二液式推進系、一液式推進系)とキセノンを使用する電気推進系とから成る)を、電気推進系だけにして簡素化しようという構想である。電気推進系は、比推力も大きいので、燃料の大幅な節約にもなる。この構想は、衛星推進系の研究開発をされている長野 寛氏が進めておられるもので、依頼を受けて、検討に参加した。
現在の静止衛星は、二液式推進系(推力 500N 程度)を使って GTO から GEO に軌道変換され、GEO では、東西方向保持及び姿勢制御は一液式推進系で、南北方向保持は電気推進系で、行なわれるのが一般的である。GTO から GEO への軌道変換は、約1800m/s の増速量が必要であり、静止衛星における最大の軌道制御である。南北方向保持制御は、年間50m/s程度の増速量であり、東西方向保持制御と姿勢制御の増速量は、南北保持の 1/10 以下である。南北方向保持制御には、既に電気推進系が使われ始めており、「オール電化」推進系の採用において最も大きな変更となるのは、GTO から GEO への軌道変換である。北九州市の小倉で開催された 2006年の宇宙科学技術連合講演会において、私が GTO から GEO への軌道変換(発表に使った
OHP シートの PDF ファイル) について発表し、長野氏が静止衛星システムについて発表された。
電気推進系を使って GEO に行くと言う解析は、私は、2002年頃から
宇宙太陽発電システム (SSPS: Space Solar Power System) の軌道間輸送の検討において実施していた。SSPS は、輸送コストを極限まで低減しなければミッションとして成立しない厳しいものなので、電気推進系の高い比推力を最大限に利用するために、出発軌道は高度 500km 程度の LEO (Low Earth Orbit) としていた。そのため、地球周辺の放射線帯を長期間飛行しなければならず、太陽電池セルが大きく劣化する問題があった。「オール電化推進系の静止衛星」では、この放射線による劣化を抑えるため、GTO 付近からの出発とした。SSPS の検討の時に作成したソフトは、GTO からの出発にも使用できるものであったので、それを基にして解析ソフトを作成した。
(その2) に続く・・・