小型衛星による災害監視

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 衛星を災害監視に利用しようという計画が世界の彼方此方で進められている。ここでは、その一つとして、小型衛星開発の老舗とも言える SSTL (Surrey Satellite Technology Ltd, イギリスのサリー大学から派生したベンチャー企業)が中心となって進めている DMC (Disaster Monitoring Constellation) 計画について紹介する。右図が DMC 計画の 5機のコンステレーションである。

 DMC 計画は、SSTL が音頭を取り、世界の国々と協力して、小型衛星による災害監視のconstellation を作ろうと言うものである。衛星は、SSTL が設計・製造し、参加国がそれを購入する形となっている。

 この constellation は、高度 686km の1つの太陽同期軌道の面内に、5つの小型衛星を等間隔に配備するものである。この高度の太陽同期軌道は、本ブログの『太陽同期準回帰軌道の力学 第2版 1986年』の「太陽同期準回帰軌道チャート」を見て頂くと、1日の周回数が、15-2/5 であり、回帰日数が 5日である事が判る。5日毎に観測では不十分なので、同じ軌道面内に 5機の衛星を等間隔に配置する事で、世界のどの地点でも毎日観測できるようにしている。DMC ができるまでは、最短でも数日間隔でしか特定の場所を観測できなかったので、大きな改善である。しかし、まだ 1日に 1回の観測であり、人命救助・2次災害の防止などのために急を要する災害監視ミッションとしては、不十分であり、最低でも災害発生から 3時間以内に、可能であれば 1時間以内に、被災地域の画像データが欲しい。観測頻度の点では、まだ改善の余地がある。仮に朝 8時~午後 5時の 9時間に対し、3時間間隔での観測を可能にするには、DMC 計画の軌道では、4倍の 20機の衛星が必要となる。

 DMC 計画の小型衛星の概要を以下に記す。
  (1)衛星質量:80kg~140kg
  (2)観測分解能: 32m (赤、緑、近赤外の3バンド)
  (3)観測幅: 600km

 現在までに、以下の 5カ国が参加し、既に衛星が打ち上げられている。
 
   国名     衛星名       Type      センサー            打上げ年
  Algeria   Alsat-1       DMC      32m MS            2002
  China    Beijing-1      DMC+4    32m MS / 4m Pan     2005
  Nigeria   Nigeriasat-1    DMC      32m MS            2003
  Turkey   Bilsat-1       DMC      26m MS / 12m Pan    2003
  UK      UK-DMC       DMC      32m MS            2003

DMC 計画の標準センサーは分解能 32m のマルチスペクトル・センサーであるが、Beijing-1 や Bilsat-1 のように、別途、4mや 12mの高分解能のセンサーを搭載した衛星もある。

 分解能 32mのマルチスペクトル・センサーについては、このサイトに詳しい情報が載っている。ここを見ると、観測波長毎に独立した光学系を採用し、3バンドをセットにしたものが単位となっている。これで観測幅が 300kmである。軌道に合わせて観測幅を 600kmにするため、2つのセンサーセットを搭載している。この衛星質量が 80kgなので、このセンサーの質量は、30kg を越える事はないと思われる。分解能 4m のセンサーも追加搭載しても、衛星質量は数十kg の増加に留まっている。

 上記のように、DMC 計画の各衛星は既に打ち上げられて運用されており、このサイトに、今までに得た画像の一部が紹介されている。昨年9月にハリケーン・カトリーナに襲われたニューオーリンズの被災状況を観測した画像も、ここにアップされている。

SSTL の今後の計画を含む DMC 関連のプレゼンテーション資料(2004年版)がアップされている。分解能が 2~3m、観測間隔が 3時間程度のミッションも構想されている事が判る。(上記のように、20機体制にして) この資料には、DMC 衛星で撮影した洪水や大きな山火事などの各災害時の代表的な画像も示されている。更に、2002年のこの資料には、150kg 級衛星の MicroSAR Mission についても書かれている。分解能は 100mであるが。
by utashima | 2006-02-10 13:30 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(8)
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Commented by kodama at 2006-03-01 12:49 x
航空宇宙技術の災害への利用可能性に関する調査という報告によれば、現場レベルでは航空写真やヘリコプターからの映像を単独で利用するにとどまっていることが明らかになったそうです。

http://www.gsi.go.jp/REPORT/TECHNICAL/H13kenkyu-nenpo/h13_30.pdf

海外の事例も含め、「タイムリーに」衛星画像が現地支援に利用された報告があれば御教示ください。
Commented by utashima at 2006-03-01 19:06
情報を有難う御座います。「タイムリーに衛星画像が現地支援に利用された例」ですが、「タイムリー」が災害発生から数時間以内を意味するとしたら、偶々撮像していた場合を除けば、まだ存在しないのではないかと思っています。つまり、私もまだ知りません。現在までの地球観測衛星は、kodamaさんもご存知のように、数日~数十日の間隔でしか観測できないので、仕方ないと思います。
Commented by kodama at 2006-03-02 12:16 x
衛星より地上側の課題が大きい気がします。

災害過程シミュレーションチーム
今後の研究課題
http://www.edm.bosai.go.jp/team1/missions_j.html

JICA-事業事前評価表
トルコ地質リモートセンシングプロジェクト
http://www.jica.go.jp/evaluation/before/2002/tur_01.html

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今回は米太平洋軍が展開してたので出番はなさげですね。
http://www.pacom.mil/special/0602pimudslide/index.shtml
Commented by 歌島昌由  at 2006-03-02 21:02 x
米国のFEMAは凄いなと思っていましたが、昨年のハリケーン「カトリーナ」時の災害対策では、色々と問題が有ったようです。地上を含めて、どのようなシステムを構築すべきか、難しい問題ですね。
Commented by kodama at 2006-03-02 21:18 x
結局、人間の問題のような気がします。

カトリーナ被災地に群らがる禿鷹ども
http://www.diplo.jp/articles05/0510.html

ちなみにパキスタンではこんなこともあったそうです。

Quake aid hampered by ban on web shots
http://www.nature.com/nature/journal/v437/n7062/full/4371072a.html
Commented by kodama at 2006-03-03 08:08 x
ビデオまで出ました。

大統領に大災害発生の「警告」と、ハリケーン上陸直前
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200603020031.html

神戸新聞が特集組むようです。

「防災大国」の苦悩 —ハリケーン禍から半年
http://www.kobe-np.co.jp/rensai/200603bousai/
Commented by utashima at 2006-03-03 08:54
kodamaさんの言われるように、どんなに良いシステムを作っても、運用するのは人間です。昨年のハリケーン災害は、その悪い例ですね。沢山の情報を有難う御座いました。
Commented by kodama at 2006-03-03 12:30 x
我々は既に何度もその教訓を得ています。

http://hotwired.goo.ne.jp/bitliteracy/ikeda/010828/textonly_02.html


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