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『高エネルギー加速器とは』(数理科学2013年8月号の記事)

 表記の科学雑誌の記事を読んで、以下の事を知った。

 高エネルギー加速器は一般に円周に沿って加速され、粒子は光速に近い速さで周回する。この時、何億周回にも及ぶ周回運動の安定性が問題となる。粒子の軌跡の半径は、ある周回で突然に変化を始め、急速に発散するような挙動となる。加速器の設計には、この不安定性を考慮しておかねばならないが、数値シミュレーションに拠るしかない。

 米国で1993年に中止されたSSC(Superconducting Super Collider) 計画では、当時の計算機能力が不十分だったために不安定性を過小評価した結果となり、小口径の電磁石で設計を行なった。しかし、計算機能力の向上に伴ない、より大口径の電磁石が必要と分かり、建設予算が数倍に膨らみ、中止に至った。

 CERN のLHC の設計では、SSC の経緯を反映して十分なビームの安定域を実現できた。

 SSC が中止になったニュースは記憶している。しかし、その背景に計算機能力の不足があった事は知らなかった。
by utashima | 2013-08-29 10:56 | 読書 | Trackback | Comments(0)


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