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最近の大きな静止衛星の情報

最近の大きな静止衛星の情報_c0011875_2045074.jpg 今日、Spaceflightnow.com のサイトで、iPSTAR-1 という大型の静止衛星が7月7日にアリアン5 で打ち上げられる事を知った。右図が iPSTAR である。Space Systems/Loral (SS/L) が製造したもので、打上げ時の質量が6500kg、発生電力は 14kW である。これは、以下に記した 1300 シリーズの一つである。この記事を見て、最近の大きな静止衛星の規模はどの程度なのか、気になって調べてみた。

1. Space Systems/Loral (SS/L) の衛星
1300 シリーズ
 打上げ時の質量:~6700kg
 発生電力:5~18kW
 トランスポンダの数:~90
 ラジエーター:固定 又は 展開式
 推進系:二液式 又は 二液式+イオンエンジン

20.20 シリーズ
 打上げ時の質量:~8500kg
 発生電力:17~30kW
 トランスポンダの数:~150
 ラジエーター:展開式
 推進系:Ion propulsion and electric orbit-raising
「electric orbit-raising」というと、低軌道から静止軌道まで、低推力の電気推進系で軌道変換すると思われるが、本当なのだろうか。SS/L のホームページを調べてみたが、これ以上に詳しい情報は見つからなかった。

 
kodamaさんから有益なコメントを頂いた。AIAA 2002-1980 という2002年の講演会のアブストラクトに関連事項が載っているとの事。読んでみると、長楕円軌道でロケットから分離し、その後、衛星搭載の二液式推進系で近地点を、バンアレン帯(放射線帯)の高度よりも高い所まで上げる。そして、電気推進系で静止軌道にする、という事である。
(注)この論文の本文も読んだので、記事『Space Systems/Loral 社の大型静止衛星の将来の打上げ方法』に概要を記した。


2. Boeing Satellite Systems の衛星
702 シリーズ
 初号機は1999年に打ち上げられた。
 発生電力:~18kW

3. Lockheed Martin Space Systems Company の衛星
A2100シリーズ
 上の A2100シリーズのリンク先を見ると、1975年~2008年までの衛星開発の歴史が図示されている。日本の放送衛星 BS シリーズを製造した GE Astro Space は Lockheed Martin Space Systems Company に繋がっている事を知った。しかし、A2100 バスの性能範囲を明記した箇所を見つける事はできなかった。

Gunter's Space Page の A2100 の所を見ると、以下の事が記されていた。(A2100 のページを表示するには、Top page の左下にある QuickSearch の箱に A2100 と入れて Go をクリックするのが早い。)
 A2100A = 1 to 4 kW
 A2100AX =4 to x kW
 A2100AXX =x to y kW
ここの x, y の値は不明。A2100AX シリーズの中に、以下の日本の衛星もあった。
 JCSAT-9 : 2005年打上げ、打上げ時の質量=4500kg
 JCSAT-10: 2006年打上げ、打上げ時の質量=4500kg
A2100AX シリーズの打上げ時の最大質量は、約4700kgであった。
A2100AXX シリーズには Garuda 1, 2 という衛星のみが記してある。打上げ時の質量は4500kgであるが、発生電力は 14kW ある。直径12m の大型アンテナを2つ展開する。
 なお、A2100 シリーズには、A2100M という軍用衛星のシリーズもある。これは、まだこれからの打上げの様であるが、打上げ時の質量は 7000kg まで可能な様である。
by utashima | 2005-06-12 00:20 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(3)
Commented by kodama at 2005-06-13 10:00 x
>「electric orbit-raising」というと、低軌道から静止軌道まで

せいぜいGTOからでわ?

AIAAにこんなのがありますが、ぐぐるとこのページが一番上に出ます。(^^;
http://pdf.aiaa.org/preview/CDReadyMICSSC02_586/PV2002_1980.pdf
Commented by 歌島昌由 at 2005-06-13 18:35 x
有益な情報を有難う。ロケットで長楕円軌道に投入後に、衛星搭載の二液式推進系で近地点をバン・アレン帯の高度よりも高く上げ、その後に電気推進系で静止軌道にする様です。記事の方にも加筆します。
Commented by d_fukumoto at 2015-09-23 17:24
電気推進エンジンってのが今後の主流になるんだねえ
ヨーロッパは今回が初
アメリカのABS-3Aは先週本格運用に入ったし
まあ10トンの衛星が燃料がいらんから5トンまで軽くなればなんでもありか


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