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ユリシーズ型太陽極軌道への軌道設計(1)  2001年

 あまり知られていないが、ユリシーズというESA/NASA共同ミッションの宇宙機(質量370kg)が太陽極軌道を飛行している。遠日点半径が約5AU(木星軌道半径)、近日点半径が約1.4AU、傾斜角は約80度。打上げは1990年であるが、2008年まで観測運用を続ける事が決定されている。このミッションは、太陽の周りの宇宙空間を色々な緯度から観測するのが主目的である。

 日本においても2000年頃から、黄道面から大きく離れた空間からの太陽磁場、黄道光、宇宙背景放射などの観測への期待が高まってきた。これを実現する軌道の一つとして、上記のユリシーズ型太陽極軌道が考えられた。そして、この軌道への投入法として、以下の方法を検討した。

(1)H2Aに2段式上段モータを付けて直接木星に向かい、木星swingbyで投入。
(2)H2A+固体モータで中間軌道に入れ、地球swingbyを経て木星に向かう。
(3)電気推進系によるEΔV-EGA(*1)を経て木星に向かう。
  (*1:Electric ΔV-Earth Gravity Assist, 宇宙研の川口教授の考案による)

 (1)では317kgの宇宙機を1年3ヶ月で木星まで届ける事ができ、(2)では448kgの宇宙機を4年4ヶ月で届ける事ができた。(3)は725kgの宇宙機を約3年で木星まで届ける事ができた。但し、(3)では米国のDeep Space-1に搭載されたイオン・エンジンの3倍以上の推力が必要であり、現在の電気推進系ではまだ困難であった。

 (2) の場合の軌道計画図を以下に紹介する。これは MAnE (Mission Analysis and Environment) という市販ソフトで求めたもの。2014年12月22日に地球を出発し、遠日点半径が約3.3AU の楕円軌道に入る。遠日点で 610m/sの space Burn を行ない、地球出発から3年余り後に地球と swingby を行なう。swingby 時に同時に約460m/sの軌道制御も行なう。出発から4年4ヶ月後に木星に到着し、木星 swingby を経て、太陽極軌道に入る。
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以下の報告書を発行した。
歌島, "H-ⅡAによるユリシーズ型太陽極軌道への軌道設計," NASDA-TMR-010011, 2001年.

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by utashima | 2004-12-31 20:31 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)


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