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L1, L2 点間の弾道飛行  1995年

L1, L2 点間の弾道飛行  1995年_c0011875_1412324.jpg 2004年9月、Utah Test and Training Range の上空に、GENESIS のカプセルが帰還して来た。予定では、パラシュートが開いてゆっくり降下している時に、ヘリコプターで回収する事になっていた。しかし、パラシュートが開かず、地上に突っ込んで来た。幸い、カプセルの損傷は致命的なものではなかったようで、中の貴重な太陽風のサンプルは、殆どが解析に使えるとの事。地上に落下した暫く後、パラシュートが開かずにかなり速い周期の回転をしながら落ちてくる動画が配信されていたのを覚えている。


L1, L2 点間の弾道飛行  1995年_c0011875_1852137.jpg この GENESIS は、太陽から飛んでくる微小な物質を捉えて地上に持ち帰り、実験室で詳細な分析をするミッションであった。その飛行経路は極めて特殊なものであった。それを右上図に示す。左側の L1 点回りのハロー軌道を約2年間飛行し、その間に太陽からの微小物質を捉えた。太陽からのサンプルを収集中の GENESIS のイメージ図を右に示す。その収集を終えると、微小な ΔV を使ってハロー軌道から離脱して右側の L2 点の周りを1回大きく回って、地球に帰還して来た。右側の L2 点回りの部分が何故必要かは、最近判った。パラシュートで落下して来る時にヘリコプターで回収するには、昼間にカプセルが再突入して来る必要があった。L1 点から直接、昼間の地球に帰還させるには、大きな ΔV が必要となり、ミッションが成立しなかったようである。

 この GENESIS の軌道設計には、1990年代に検討が進められた Dynamical Systems Theory (力学系理論) の成果が利用されている。L1, L2 点の周りには、安定多様体、不安定多様体と呼ばれる軌道群が存在し、その性質を使うと、L1, L2 点の間の燃料を殆ど必要としない飛行が可能となる。

 1995年頃、火星の衛星のフォボスの L1, L2 点間を飛行する軌道の設計を行なった。火星-フォボス系の L1, L2 点は、フォボス表面から 5km 余りの高度に存在する。L1, L2 点周りの軌道でなく、L1, L2 点そのものの間の飛行を扱った。この頃は、 Dynamical Systems Theory をまだ知らず、初期条件を色々と手探りで変えて移行軌道の初期値を作った。その後は、微分修正法で収束させた。太陽-地球系の場合との大きな違いは、火星-フォボス系の場合には、L1, L2 点間の空間の殆どを、フォボス自身が占めている事である。そのため、フォボスとの衝突が容易に起こり得る。因みに、右上のGENESISの軌道図の中心にスケールを合わせたフォボスを置いてみると、この軌道では、フォボスに衝突すると思われる。

 試行錯誤で初期軌道を求め、その後、微分修正法で収束させた、 L1 点から L2 点にフォボスの南極上空を通過して飛行する軌道図を以下に2つ示す。一つは対称な形状の軌道、もう一つは非対称な形状の軌道である。これらは平面図と立面図を重ね描きしている。
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L1, L2 点間の弾道飛行  1995年_c0011875_22231483.jpg

対称な軌道図には、フォボスの断面形も描いた。これを避けて L1 点から L2 点に飛行しなければならない。以下の図にL1点からL2点への複数の移行ルートを模式図的に描いたが、第1ルートが、上の非対称な軌道である。螺旋形状の軌道となっている。
L1, L2 点間の弾道飛行  1995年_c0011875_22333595.jpg


これらの軌道の詳細は、以下の報告書に記した。
歌島, "作用圏境界を飛行する軌道の力学的性質と小衛星探査への応用," NASDA-TMR-010007, 2001年.
 
by utashima | 2005-05-24 00:09 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)


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