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軌道寿命を簡単に評価できるチャート

 記事『まだ軌道上にあったETS-Ⅳ』で、ETS-Ⅳの軌道寿命はおよそ30年かなと書いた。このような長楕円軌道の寿命を比較的簡単に事前評価できるチャートがある。NASA Johnson Space Centerのホームページ"NASA Orbital Debris Program Office"の中の"Orbital Debris Mitigation"に、"NASA Safety Standard 1740.14"というPDFファイルが公開されている。これは、NASAの宇宙機ミッションを考える際にデブリを増やさないという観点から、事前にどのような事をチェックしておかねばならないかを記したドキュメントであり、1995年に制定されている。

 このドキュメントの中のFigure 6-3を使えば、高離心率の軌道の寿命が25年よりも長いか短いかを簡単に評価できる。下の図がそれである。
軌道寿命を簡単に評価できるチャート_c0011875_15151835.jpg

横軸が初期の遠地点高度、縦軸が初期の近地点高度、図中の複数の数値は「断面積/質量(m2/kg)」である。ETS-Ⅳの断面積/質量は約0.01なので、寿命が25年となる初期の近地点高度は、約210kmと判る。図中の赤丸である。ETS-Ⅳの初期近地点高度は約225kmなので、寿命は25年よりは長い事が予測できる。なお、『月太陽潮汐力による長楕円軌道の近地点高度変動 1979年』で紹介したように、GTOの近地点高度は月太陽などの影響で数十kmの振幅で変動があるため、事前に平均的な近地点高度を計算しておいて、このチャートを利用すれば、軌道寿命の精度が向上すると考えられる。
by utashima | 2005-04-29 15:11 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)


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