ETS-Ⅵが日本で初めて液体アポジエンジンを採用するとの情報があり、従来のインパルス近似による計画では問題なため、検討を開始した。先日(2005年2月26日)打ち上げられた「ひまわり6号」も液体アポジエンジンを使っているが、3回に分けて噴射している。1984年当時は、1回の噴射で静止軌道に近いドリフト軌道に投入する事を想定して検討した。
私は、この検討で初めて、最大原理/変分法を勉強し、最大原理だけでは解き辛いため、非線型計画法も合わせて勉強した。ESAの論文も参考にして、以下の解法を提案した。
歌島, "最大原理プラス非線形計画法による低推力AMFの最適化," TK-M95307, 1984年.
この方法を使って、GTOから静止軌道へ1回の制御で変換する最適制御問題を、推力415Nの場合と2000Nの場合に対して解いた。推力 415N の場合の最適な推力方向の赤緯変化を以下のグラフに描いた。提案した最大原理プラス非線形計画法による解の他に、Differential Dynamic Programming による解と10分割の非線型計画法による解も描いた。
提案した方法では、推力のオンオフ時刻をスイッチ関数から決めるのでなく、非線形計画法の可変パラメータとして扱っている。このようにして得た解からスイッチ関数の変化を計算し、オフ時刻でゼロになっているか(オン時刻でゼロとなる条件で計算)で最適性のチェックをした。すると、推力が小さいほど最適性は良好である事が判った。これらを以下の資料にまとめた。
歌島, "液体アポジ・エンジンの最適制御(最大原理による数値計算)," TK-M15303, 1986年.
なお、現在、液体アポジ・エンジンの制御計画がどのように作成されているかは、担当部署を離れて久しいので把握していない。