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オープンソースの軌道解析ツール(その3)

3.GMAT の機能―STK/Astrogator と比較して―
 ここでは、GMAT の機能を、STK/Astrogator と比較しながら紹介する。

2D表示機能
(1)地上軌跡表示機能
 現版(2008年9月30日版)では、primary body の 2D 地図上に 表面軌跡を描く機能は見当たらない。
(2) x-y グラフ描画機能
 任意の変数を x-y グラフとして描く事が可能。STK も同様の機能を持つ。

3D表示機能
(1) trajectory の陰線処理
 現版では、地球などの天体の向こうにあって見えない trajectory も表示されてしまう。
(2) Remote Desktop での 3D表示
 STK では、Remote Desktop で使うと 3D 表示は出来ない。ところが、GMAT では問題なく出来ている。

軌道制御の機能
(1)インパルス的軌道制御の機能
 STK/Astrogator と同様の機能がある。
(2)有限時間燃焼による軌道制御の機能(電気推進による制御も含む)
 STK/Astrogator と同様の機能がある。以下に、サンプル script を実行した画面を示す。
オープンソースの軌道解析ツール(その3)_c0011875_11233485.jpg


地球観測ミッションへの利用
(1)準回帰パラメータからノミナル平均軌道要素を算出する機能
 太陽同期性や準回帰パラメータ (N:日周回数, M:回帰日数, L:日移動数) から、平均高度や平均傾斜角を設定する機能は、現時点では見つかっていない。STK では、時々間違った軌道要素を出力する事があるが、注意すれば使える機能がある。
(2)平均軌道要素から接触軌道要素への変換機能
 これも存在しない。STK にも存在しない。要望はしているが。
(3)接触軌道要素から平均軌道要素への変換機能
 これも存在しない。STK には存在する。
(4)大気密度モデルの実装
 MSISE90 と Jacchia-Roberts の2つの地球大気密度モデルが実装されている。

---2008年11月22日に追記---
(5)実高度の計算機能
 地球観測衛星などの軌道設計においては、平均軌道要素を使って太陽同期性や準回帰性を満足する軌道を設計する。その結果得られる平均軌道長半径を用いて、次式で定義されるもの(一般に使用されている名称は無いが、ここでは設計高度と呼ぶ)をその軌道の高度と言っている。

   設計高度=平均軌道長半径-赤道半径

 そのように設計された平均軌道要素を接触軌道要素に変換し軌道生成して得られる実際の高度(地球の扁平率も考慮、これをここでは実高度と呼ぶ)は、上記の設計高度とは異なる。本ブログの『TRMMの高度変動』に、平均軌道要素から実高度を計算する式を掲げている。その式の誤差は、50m程度である。
 
 GMAT で、実高度の計算ができるか確認してみた。私の近似式との差は 50m 以下で正常であった。STK/Astrogator でも実高度の計算は可能である。
---2008年11月22日追記終了---

ラグランジュ点ミッションへの利用
(1)ラグランジュ点中心回転座標系と慣性座標系の相互変換機能
 表示座標系として、ラグランジュ点中心回転系を選択できる。GMAT には 10個以上のサンプル・スクリプトも付属しており、太陽-地球系 L1 点周りのリサジュ軌道の軌道保持を計算するものもある。実行した結果を下の図に示す。約1.5年間の軌道保持である。
オープンソースの軌道解析ツール(その3)_c0011875_11454067.jpg

 ここまでは、概略軌道保持できているが、制御則をそのままにして、保持期間を約2.7年間に延長してみると、次の図の結果となった。途中から制御が不適切となり、L1点周りから逸脱している。このサンプルでは、簡単過ぎる制御則を使っており、月重力の外乱に耐えられなかったと思われる。
オープンソースの軌道解析ツール(その3)_c0011875_11481366.jpg


惑星周回ミッション
(1)大気密度モデルの実装
 大気密度モデルが実装されているのは、地球のみである。火星の大気密度モデルも欲しい。

まとめ
 地球観測ミッションに用いるには、現状では不便である。また、制約条件付きの最適化計算機能(SQP法)も使えると書かれており、サンプル script も存在するが、実行してみると SQP 法のプログラムが見つからないと言うエラーメッセージが出て動かない。今のところ原因不明である。まだ β 版なので、今後に期待したい。
 現状でも、Astrogator の MCS よりも自由度の大きい Mission Sequence を持ち、全くフリーで使用できるメリットは大きい。

***(続く)***
by utashima | 2008-11-09 11:10 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)


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