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『不平等をめぐる戦争(上村雄彦著)』を読んで

 集英社新書から表記の本が出版されている。副題は「グローバル税制は可能か?」である。世界の経済格差は、どんどん拡大している。以前は総中流社会と言われた日本においても、貧困率の増大が問題になっている。貧困が次の世代に及ぶことを可能な限り防ぐ必要があり、親が貧困であっても、努力すれば高度な教育を受けられるように、給付型奨学金を増やそうという政策が、日本でもやっと開始されることになった。また、高速なコンピューターを使った投機的な金融取引を行なって暴利をむさぼり、得た利益をタックス・ヘイブンに集めて税金逃れをしている等の事が、報道されている。

 高額な所得や高額な資産を持つ人達からもっと沢山の税金を取るべきだと以前から考えていた。税率が高い国からタックス・ヘイブンに資金を移して巨利を得る事もできないようにすべきと思っていた。しかし、これらの事は、実現はできないのだろうと諦め気分であった。しかし、この本を読んで、グローバル・タックスと考えられる幾つかの国際的な税制が稼働を始めている事を初めて知った。その一つが、航空券連帯税である。航空券連帯税は、感染症対策を中心とした国際協力を目的に、実施国を離陸する国際線のすべての乗客に課税するもの。これは2006年からフランスで導入され、現在14か国で導入されている。日本はまだ実施していない。2011年9月には、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が、欧州金融取引税を各国が導入する指令案を出している。現在は議論が行われている段階らしい。日本でも、グローバル連帯税推進協議会(第二次寺島委員会)の最終報告書が2015年に出されている。
by utashima | 2017-04-02 19:57 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

明治から昭和の戦争の歴史

 2016年7月30日、NHK総合で放送された夫婦の愛と絆を描く終戦スペシャルドラマ『百合子さんの絵本 〜陸軍武官・小野寺夫婦の戦争〜』を観た。陸軍武官の小野寺信は、妻百合子を伴って、スウェーデンの首都ストックホルムで駐在武官として勤務した。1945年2月に行なわれたヤルタ会談の密約を諜報活動に依り入手する。密約とは、ドイツ降伏後3か月以内にソ連が日本に攻め込むというもの。小野寺は百合子に暗号化して貰って日本に打電する。しかし、日本の上層部は、握り潰した。

 この番組を観て、小野寺信の事をもっと知りたいと思い、以下の2つの本を電子版で読んだ。

(1)岡部伸著:『消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い』(新潮社、2013年)
 今の日本には英国のMI6や米国のCIAのような諜報機関はないが、第二次世界大戦の頃までは小野寺信のような駐在武官らが諜報活動をしていた。私はこの事自体をこれまで知らなかった。小野寺は当時欧州では恐れられた日本のエージェントだった。ソ連が日本に攻め込むという重大な情報を小野寺から手に入れながら、日本の上層部は既定の方針(ソ連に太平洋戦争の調停を依頼しよう)に不都合という事で無視した。日本は昔から現場の人間は凄いが、上層部がお粗末なのか。

(2)加藤陽子著:『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2015年)
 この本は、日清戦争から太平洋戦争までの日本人の選択を、中高校生と考えようと思った著者が、2007年の冬休みの5日間に中高校生十数名に行なった講義をまとめたもの。分かり易くて良い本と思った。

日清戦争(1894〜1895年)から10年後に日露戦争(1904〜1905年)、更に10年後に第一次世界大戦(1914〜1918年)、その十数年後に日中戦争〜太平洋戦争と、日本はほぼ十年毎に戦争していた。太平洋戦争に負けてから現在まで71年。この期間を無限大に延長したい。
by utashima | 2016-10-01 15:21 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

NASAはミュー粒子を使って小惑星の内部探査を検討

 『日経サイエンス』(2016年4月号)の「素粒子で地球を透視」という記事に、興味深い事が書かれていた。ミュー粒子を使って、火山内部や福島第一原発内部を透視して観測する事が行なわれている。この技術は、将来、小惑星探査に適用すれば、小惑星の内部構造を知る事が出来そうだと以前から思っていた。この記事の68頁に、NASAが、1km程度のサイズの小惑星の内部探査にミュオグラフィ(ミュー粒子を用いた透視技術)を使う事を検討していると書かれていた。
by utashima | 2016-04-11 19:16 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

『世界史再入門』(浜林正夫著、2008年発行)

日本の歴史の本を読んだので、次は世界史をと考えて2,3の本を読んでみた。それらの中で標記の本が、分量も適当であり、私にはしっくり来た。

「まえがき」に以下の様な事が記されている。
 手ごろな世界史の入門書の要望があるが、世界史をどう組み立てるか、なかなか巧くいかない。「世界の歴史」というシリーズ物は沢山あるが、いずれも分量が多すぎ、筋が見えない。高校の教科書は手ごろだが、通読するのが苦痛なくらい単調で、むやみに人名・年代・事件が出て来て、大きな筋を掴みにくい。本書では、上記の問題点を克服する方向で、何とかまとまりを付けられたと思っている。これは私の世界史試論である。

 この本は、1991年に刊行された原本を文庫化したものであり、その際、第8章「21世紀はどういう世紀か」が加筆されている。

序章「宇宙と人類史」で印象に残った内容
・現代の世界が抱えている多くの問題(戦争、人種差別、飢餓、地球環境の破壊など)に気付き、これを改めなければならないと感じた時、我々は世界史を見る視点を持ち始める。
・世界史とは、人々の生存への努力、そのための労働と生産の営み、そして生命の大切さを互いに認め合うに至る歴史である。

第1章「人類の誕生」で印象に残っている内容
・原人が1世代当たり15km移動したとすれば、ケニアから北京まで1万5000年位で移動できたとされる。

第2章「文明の成立」で印象に残っている内容
・紀元前2世紀に司馬遷によって書かれた『史記』によると、中国最初の王朝は「夏」であったとされているが、実在したかは疑問。現在確認されている中国最古の王朝は「殷」であり、紀元前17世紀頃に成立。
・インド最古の文明はインダス文明といわれているが、詳細はまだ明らかになっていない。遺跡から文字も見つかっているが、このインダス文字はまだ解読されていない。

第3章「古代帝国の時代」で印象に残っている内容
・ギリシャはローマ帝国、ビザンツ帝国、オスマン帝国の支配を次々に受け、文化的にヨーロッパ世界全体に非常に大きな影響を与えたものの、政治的には独立を守る事が出来ず、1829年にようやく独立を達成。
・インドのカースト制度はアーリア人の時代に作られたもの。アーリアは「高貴な」という意味。彼らは被征服民である先住民をヴァルナとして差別した。カーストは、「混じり合わない」という意味で後にポルトガル人が付けた呼び名。色(ヴァルナ)によって差別する事から、本来はヴァルナ制度と呼ばれる。

第4章「封建制の時代」で印象に残っている内容
・イスラム教を説いたムハンマド(マホメット)は一旦故郷メッカを追われたが、やがてムスリム(イスラム信徒)の共同体を作り、アラビア半島を統一、その後継者たち(カリフ。ムハンマドの代理という意味)は西はイベリア半島、北アフリカから東はインド西部まで及ぶ大帝国を作り、ウマイヤ王朝(アラブ帝国)を開いた(661年)。
・ムハンマドの子孫こそ正当な後継者であると主張するシーア派は、ウマイヤ朝を倒してアッバース王朝(イスラム帝国)を建てた(750年)。
・宋代の中国に二毛作を伝えたのはベトナムであった。

第5章「近代世界の成立」で印象に残っている内容
・西ヨーロッパ諸国の世界進出の中で植民地化を免れたのは中国と日本である。
・明の洪武帝(在位期間:1368年-1398年)や永楽帝(在位期間:1402年-1424年)などは対外的に発展する政策を取った。永楽帝は、モンゴル、ベトナム、東北へ遠征したが、特に宦官鄭和(ていわ)に行なわせた南海遠征はアフリカ東海岸にまで達するという壮大なものであった。目的は貿易拡大ではなく、明朝への服従と朝貢を求めるものであったので、諸民族の反撥を招き、逆にモンゴルや日本人による侵略や密貿易に脅かされるようになった。

第6章「資本主義の時代」で印象に残っている内容
・イギリスには毛織物産業の長い伝統と技術の蓄積があり、これにアメリカ合衆国南部で生産されるようになった綿花という豊富で安い原料が結びついて、イギリスの原綿消費量は1780年代に5倍近くに増え、1790年代から1840年までに更に約15倍に増えた。
・19世紀中ごろ、イギリスは世界の石炭総生産量の三分の二、鉄の半分、自家消費用以外の綿布の半分を生産し、世界の隅々にまでその製品を売りさばいていた。
・アメリカ南部はイギリス綿業への原料供給地であったので自由貿易を主張し、東部はイギリスに抵抗して産業発展を図るために保護貿易を主張したので両者は対立、これに奴隷制を認めるかどうかという問題も絡んで、対立は深刻化。1860年、南部は合衆国から脱退し、翌年アメリカ連邦を結成した。リンカーン大統領は南部の脱退を認めず、南北戦争が始まる。
・20世紀の初め、アフリカ大陸は、リベリアとエチオピア以外は全て植民地となっていた。
・19世紀の後半、スペイン領だったフィリピンに独立運動が起こり、アメリカはその運動を支援し、独立を約束したが、戦後約束を破り独立を認めず、フィリピンはアメリカ領となった。
・ロシアは、清が次々とイギリス、フランスの要求を受け入れるのを見て、1858年アイグン条約により黒竜江以北を獲得し、1860年には北京条約によって沿海州を手に入れ、ウラジオストックに港を開いた。

第7章「現代の世界」で印象に残っている内容
・アメリカとイギリスは、1941年に大西洋憲章を発表し、反ファシズム、民族自決、領土不拡大原則などを掲げ、翌年に中国とソ連も含む26か国が加わって連合国共同宣言が発表された。
・日本への原爆投下は、ソ連が日本との戦争に加わり、日本の占領に乗り出して来るのに対して先手を打つためであったと言われている。
・韓国では1960年に経済停滞と政治不正への不満から李承晩政権が倒され、1961年に軍部がクーデターを起こし、朴正煕軍事政権が成立した。1979年に朴大統領が側近により暗殺され、1980年に再びクーデターによって全斗煥政権が誕生し、光州事件などにより民衆運動を弾圧した。1987年に憲法改正が行なわれ、戦後初めてクーデターに依らない選挙によって盧泰愚が大統領になった。
・1975年にサイゴン陥落と相前後してカンボジアでポル・ポト派による革命が勝利して民主カンボジアが生まれた。ポル・ポト派は中国に支援されて大弾圧によって政権維持を行なう。これに対し、ソ連の支持を受けていたベトナムはポル・ポト派によるベトナム攻撃の危険を感じてカンボジアに侵攻し、1979年にカンボジア人民共和国を建てた。1989年にベトナム軍は撤退した。

第8章「21世紀はどういう世紀か」で印象に残っている内容
・この本の初版は1991年に刊行されたので、1990年頃までしか世界の動きを辿っていない。そこで、この新版ではその後の世界を少し補足する。
・ゴルバチョフが始めたペレストロイカは、彼の目標を遥かに超えて、ソ連邦という体制を崩壊させた。
・イラン・イラク戦争(1980年~1988年)の際、アメリカはイラクを支援した。反米的なイラン革命の広がりを恐れたため。イラクのフセイン大統領は、アメリカは今度もイラクを支援すると期待して、1991年にクウェートを侵略したが、フセインの予想を裏切って、アメリカは多国籍軍を編成してイラク軍をクウェートから追い出した。
・中国が抱える問題の一つは、チベット・新疆ウイグル両自治区の独立運動である。チベットは1951年に中国に併合され、1959年に反乱がおこり最高指導者ダライ・ラマ14世はインドへ亡命した。
・カリブ海には13の国があるが、その内7か国は軍隊を持っていない。世界に軍隊を持たない国は27あるが、その1/4はカリブ海の国である。
・日本では1991年に宮沢内閣が成立してから2001年の小泉内閣までの10年間に7つもの内閣が誕生した。
・核兵器を持ち込ませないと言う非核地帯条約がラテンアメリカ(1967年)、南太平洋(1985年)、東南アジア(1995年)、アフリカ(1996年)、中央アジア(2006年)で締結されている。今では地球の南半分には核兵器は存在しない状況になっている。
by utashima | 2014-07-09 22:40 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

『里山資本主義』(藻谷浩介、NHK広島取材班 著)

『里山資本主義』を読んだ。

 私は、これからの経済成長率は0%が基本と思っている。沢山の開発途上国が資源をどんどん使い始める事を考えると、先進国は今まで通りのプラス成長を狙うのは間違っていると思う。日本は今後人口が減るので、国全体の成長率がゼロでも、一人当たりのGDPは向上し、各人の生活レベルは向上できよう。
 従って、今のアベノミクスの+2%成長を目指すというのは、如何なものかと思う。

 上記のように考えていた時、標記の本を読み、賛同した。
 中にオーストリアの話が出て来る。一人当たりGDPは日本を上回っている。国を挙げて木質バイオマス・エネルギー活用を進めている。オーストリアは「脱原発」を憲法に明記している。なお、1969年には原発の建設を決め、1972年に建設が始まり完成しているが、一度も稼働されることはなかった。更に、原発由来の電力は使いたくないとの考えで、2011年7月(東日本大震災の後)に「エコ電力法」を改正し、自然エネルギーの利用を一層進める事にしている。オーストリアの人たちは、今までロシアからパイプラインにより天然ガス供給を受けており、ガス供給を停止するとの脅しを度々受けて来た。今もウクライナ情勢が不安定化している。

 この本の製本版を買った後、楽天Kobo電子書籍版も発売されている事を知った。紙媒体の本より廉い。楽天Koboでは、PCで電子書籍を読める無料アプリを提供しており、私も利用を開始した。電子書籍は本を幾ら購入しても場所を取らないし、検索もできる等、便利である。しかし、今までは、電子書籍リーダーでしか読めなかった。私は、デスクトップPCの大画面で読みたい。楽天Koboのアプリは私の目的にピッタリ。読み易い文字サイズにして、利用している。
by utashima | 2014-05-13 18:04 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

『満韓ところどころ』(夏目漱石著)

 青空文庫で夏目漱石の随筆『満韓ところどころ』を読んだ。漱石は1909年(明治42年)9月2日から10月14日まで満州・朝鮮を旅行しており、その紀行文が『満韓ところどころ』である。朝日新聞に1909年10月21日から12月30日まで掲載された。旅行直後の1909年10月26日に満州のハルビン駅構内で、伊藤博文が暗殺されている。

 この旅行は、漱石の親友である中村是公(なかむら よしこと、通称なかむら ぜこう、南満鉄道会社の総裁)に誘われて出かけたもの。日露戦争が終わった1905年から4年しか経ていない時である。大連、旅順、二百三高地などを巡っている。持病の胃炎のため、旅行中も胃痛が絶えなかったようだ。
by utashima | 2014-04-23 22:39 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

『日本大地震』(斎藤茂吉著)

 1929年10月に「改造」(*)に初出の表記文章が、青空文庫にあったので読んだ。
(*)「改造」は、戦前の日本で発行されていた、社会主義的な評論を多く掲げた日本の総合雑誌。1919年(大正8年)創刊、1955年(昭和30年)廃刊。

 ウィキペディアによると、斎藤茂吉は、1921年10月から精神病学研究のため欧州留学に出発。11月1日神戸を出航、香港、シンガポール、マラッカ、コロンボ、スエズから陸路カイロ往復、マルセイユ、パリを経て12月20日ベルリンに到着。1923年(大正12年)に学位論文「麻痺性痴呆者の脳図」を完成させ、イタリア旅行を経て7月、ミュンヘン大学に転学している。

 表記著作は、ミュンヘンに到着後から始まっている。住む部屋探しに苦労している記述がある。南京虫が出ない部屋を探していたようだ。ちょうどその頃、夕刊の“Die Erdbebenkatastrophe in Japan”と題した日本震災の記事で関東大震災を知る。斎藤茂吉は以下の様に記している。
 上海電報に拠よると、地震は九月一日の早朝に起り、東京横浜の住民は十万人死んだ。東京の砲兵工廠は空中に舞上り、数千の職工が死んだ。熱海・伊東の町は全くなくなつた。富士山の頂が飛び、大島は海中に没した。云々である。

 更に以下の様に書いている。
 私も部屋のことで斯う愚図愚図してゐてはならぬと思ひ、けふも数軒部屋を見、遠くて不便であるが一間借りるやうに決心した。私はけふはもう教室に行く勇気はなかつた。夕刊を読むと日本震災の惨害はますますひどい。私等は何事も手に附かず、夕食後三人して麦酒を飲みに行つた。酒の勢を借りてせめて不安の念を軽くしようとしたのであつた。

 9月13日の夕方、斎藤茂吉に電報が届き、家族の無事を知った。そして、当分ミュンヘンに留まる決心をし、1924年末に帰国した。
by utashima | 2014-04-04 11:49 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

『大正十二年九月一日の大震に際して』(芥川龍之介著)

 夏目漱石の『こころ』を読んだので、次は何を読もうかと、青空文庫を眺めた。芥川龍之介の作品の中に、表記の『大正十二年九月一日の大震に際して』があったので、読んでみた。二、三十年以内に首都圏に大地震が発生する可能性が高いと言われており、1923年の関東大震災を実際に体験した芥川龍之介の文章を是非読んでみたかった。

 龍之介は地震発生直前の1923年8月に鎌倉を旅して8月25日に東京の田端に帰っている。鎌倉に居た時、以下の記述がある。
 
藤、山吹、菖蒲と数へてくると、どうもこれは唯事ではない。「自然」に発狂の気味のあるのは疑ひ難い事実である。僕は爾来人の顔さへ見れば、「天変地異が起りさうだ」と云つた。

 関東大震災は、龍之介が東京に帰ってから約1週間後に発生している。上記の予想は、龍之介自身も余り信じていなかったようだ。

 龍之介は、東京に戻ってから風邪をひいている。8月29日に38.6度の発熱だった。家族全員が風邪の状態だった。9月1日の地震発生当日の記述は、以下の通り。
 午ごろ茶の間にパンと牛乳を喫し了り、将に茶を飲まんとすれば、忽ち大震の来るあり。母と共に屋外に出づ。妻は二階に眠れる多加志を救ひに去り、伯母は又梯子段のもとに立ちつつ、妻と多加志とを呼んでやまず、既にして妻と伯母と多加志を抱いて屋外に出づれば、更に又父と比呂志とのあらざるを知る。婢しづを、再び屋内に入り、倉皇比呂志を抱いて出づ。父亦庭を回つて出づ。この間家大いに動き、歩行甚だ自由ならず。屋瓦の乱墜するもの十余。大震漸く静まれば、風あり、面を吹いて過ぐ。土臭殆ど噎ばんと欲す。父と屋の内外を見れば、被害は屋瓦の墜ちたると石燈籠の倒れたるのみ。

 田端付近では、屋瓦が落ちた事と石灯籠が倒れた事だけだったようだ。関東大震災は、神奈川県西部を震源とした地震であった。夜、東京方向を見ると、大いなる溶鉱炉を見るが如しと書いている。
 9月2日の夜は、龍之介は39度の発熱だった。
 廃墟東京を見て、龍之介は以下の様に書いている。
 
応仁の乱か何かに遇つた人の歌に、「汝も知るや都は野べの夕雲雀揚るを見ても落つる涙は」と云ふのがあります。丸の内の焼け跡を歩いた時にはざつとああ云ふ気がしました。

 この文章の最後では、古書の焼失を惜しんでいる。
by utashima | 2014-04-02 00:33 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

夏目漱石『こころ』

 私は自宅では、2012年10月に購入した東芝のREGZA PC D732/T7(Windows 7)を使っている。数日前、何気なくPCに付属のソフト群を眺めていて、「BookLive! for Toshiba」というソフトに目が留まった。まだ使っていなかった。電子ブックを読む時に使うソフトらしい。起動してみると、無料の「青空文庫」の本も読める。なお、「青空文庫」の作品は、ブラウザでも読めるので、「BookLive! for Toshiba」を使う必要はない。でも、折角付属しているので、「BookLive! for Toshiba」で「青空文庫」の作品を読んでみる事にした。「BookLive! for Toshiba」を使い始めてまだ数日だが、その間に2回ソフトの更新があった。更新で良くなるのは良いが、更新後にPC再起動を要求されるのは困る。地デジ番組の録画機能が動いている事があるので。

 最初に読んだ作品は、夏目漱石の『こころ』。学生時代に読んだと思うが、殆ど覚えていないので、読み返した。最後の辺りに、友人Kの自殺の原因は、天と自分しか知らない・・・、といった記載がある。私は日頃思っている事だが、全世界の指導者達(特に政治家たち)には、「天は全てお見通し」という気持ちを持って、行動して戴きたい。
by utashima | 2014-04-01 17:17 | 読書2 | Trackback | Comments(0)

『日本の歴史』全26巻を読み終えて

 『日本の歴史』全26巻を2009年2月から読み始め、今日(2014年3月13日)読み終えた。5年掛かった。私は大学受験の社会の科目に日本史を取らなかったため、日本史の知識が不十分であり、60歳を前にして勉強し直したいという気持ちがあった。そして最初に手に取った本シリーズの第00巻が興味深く、それが全巻読破に繋がった。

 近年、近隣諸国との歴史認識問題や領土問題などが、新聞・テレビなどで度々報じられているが、本シリーズを読んで得た知識や考え方をベースに、自分の考えをしっかり持って行こうと思っている。

 本シリーズを読みながら、私が興味を持ったことを中心に、ブログの記事にして来た。その際、遺跡の場所などはGoogle Mapで探し、歴史資料もネットで見るように努めた。そしてブログ記事の中に、それらへのリンクも貼って行った。最近のネットの普及で歴史の勉強も便利になった。

 今後は、世界の歴史書を読んでみたいとボンヤリ思っているが、まだ何を読むか決めていない。
by utashima | 2014-03-13 23:44 | 読書2 | Trackback | Comments(0)