カテゴリ:宇宙開発トピックス( 49 )

NASA's Eyesの3D Phobos

 私のブログのこちらで、NASAの3Dサイトを2つ紹介した。Eyes on the Solar SystemとEyes on the Earthである。これらのサイトがNASA's Eyesというサイトに統合されていた。系外惑星の研究も含まれている。このサイトから、『NASA'S Eyes』というソフトをダウンロードできる。

c0011875_21324215.jpg NASA's Eyesを起動し、火星の第一衛星Phobosを表示してみた。右の画像である。火星を背景にPhobosが見える。この画像を見て、おかしいと思った。この画像のPhobosの左端に大きな「くぼみ」が見える。Stickneyという名前のクレーターである。このクレーターはPhobos最大のクレーターである。Phobosも地球の月と同様に、公転と自転の速度が同じである。そして、火星から見ると、StickneyクレーターはPhobosの左側(Leading side)に見える。NASA's Eyesの画像は、Stickneyの位置が逆になっている。

 ESAの火星探査機Mars Expressが撮影したPhobosの画像が、こちらにある。この画像が掲載されているホームページは、こちらである。どの向きに火星が有るか等も詳しく示されている。この写真の右端にある「くぼみ」がStickneyクレーターである。NASA's Eyesの画像とは位置が異なっている。

 1週間ほど前に、NASA's Eyesサイトのサイト・マネージャーに、この事をメールで問い合わせた。

[追記(2016年3月11日)]
 2016年3月11日に久し振りにNASA's Eyesを実行してみると、上記の版からupdateされていて、Phobosの向きは正しい状態に修正されていた。しかしサイト・マネージャーからの連絡はなし。
by utashima | 2015-11-28 21:32 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

イオとエンケラドスの離心率

 土星の第二衛星のエンケラドスは、内部が高温になっている事が分かった、との報道を3月19日の朝刊で読んだ。その記事では、「ただ、熱水活動のもとになる熱源は、よくわかっていない。研究チームは『潮汐(ちょうせき)による加熱』を挙げる。土星を周回するエンケラドスの軌道はゆがみが大きい。土星との距離に応じて衛星全体が変形を繰り返し、内部の物質の摩擦が起きて熱が生じる仕組みだ。だが、十分には解明されていないとも説明する。」と書かれていた。

 この記事を読んで2006年版と2012年版の理科年表を調べた。エンケラドスの離心率は0.004位の値だった。これを「ゆがみが大きい」と表現する事に違和感を持った。地球観測衛星の軌道離心率は、大抵0.001程度。その4倍だから大きいと言えば言えなくもないが、私はどちらも1/1000のオーダーであり、「僅かに歪んでいる」程度と感じた。

 この時、木星の第一衛星のイオの離心率が気になった。イオは、潮汐加熱のために今でも火山噴火している事で有名。上記の2つの理科年表で見ると、何と0.0000。これが正しいとすると、ゆがみが無くても内部が過熱する事になる。そこで、ネットで調べてみると、こちらの資料に、潮汐加熱量は離心率の2乗に比例する事が述べられている。

 そこで、最新版(2015年版)の理科年表を調べてみた。そこでは、イオは0.004位で、エンケラドスは0.0000だった。イオの値は最新版が正しく、2006年版と2012年版は誤っていると考えた。エンケラドスは、逆に、以前の版の値が正しく、最新版は誤りだろうと思った。

 ここまで調べて、理科年表の出版社である丸善(株)に問い合わせた。天文台に問い合わせて頂き、「エンケラドスの最新版の値(0.0000)は不適切であり、0.004位の値が適切である。」との返事を教えて頂いた。結局、どちらの衛星も離心率は0.004位という事に落ち着いた。

[追記(2015年12月7日)]
 2016年版の理科年表を見たが、エンケラドスの離心率は、不適切な0.0000のままであった。
by utashima | 2015-03-28 19:03 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

ESAの新大気モデル(DTM2013)

 2013年11月11日に落下したGOCEのデータから作成された報告書を読んで、ESAの大気密度モデルを知った。DTM2012である。DTMはDensity Temperature Model の略である。このモデルは、こちらのサイトからダウンロードできる。但し、事前に登録が必要。誰でも登録できる。幾つかの OS 上で動作するようだ。pre-compiled library が提供されている。ライブラリ自体のソースコードは含まれない。

 この記事を書くために上記サイトに再びアクセスすると、新版のDTM2013も公開されていた。DTM2013にはGOCEで得たデータも反映されているらしい。
by utashima | 2013-11-23 21:44 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

GOCE データによる大気モデル評価

 2013年11月11日に、ESAのGOCE がミッションを達成し、燃料切れで落下した。

GOCEは2009年3月17日にロシアのロコット・ロケットで、昇交点地方時18時の太陽同期軌道に投入され、高度295kmでロケットから分離された。大気抗力で高度を下げた後、イオン・エンジンの連続噴射により、高度260km付近を Drag-free で飛行。2012年8月からは高度を235kmに下げて運用を行ない、世界で最も低い高度を周回する衛星であった。GOCEの目的は、100km程度の地表分解能でジオイド高を約1cmの精度で求める事であった。

 落下した後、すぐにネットで調べると、GOCEの加速度計などで得られたデータから大気密度を求め、既存の幾つかの大気モデルと比較した報告書が見つかった。こちらのサイトに公開されている。詳細な数値データは、一部の研究者だけがアクセスできるようだが、そのサイト下のdocumentation欄の資料は誰でもダウンロードできる。validation reportfinal report は大いに参考になる。これらは、サイズの大きいPDFファイルである。
by utashima | 2013-11-23 20:27 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

NASA RBSPを近日中に打上げ

c0011875_1059566.jpg NASAは、2012年8月23日に ATLAS-V で RBSP(Radiation Belt Storm Probe)衛星2機を同時に打ち上げる予定。質量は、各々650kg程度。このミッションの軌道は、近地点高度約500km、遠地点高度約3万km、傾斜角10度の長楕円軌道である。

 2衛星の遠地点高度を約100kmずらしておく事で、約75日周期で2衛星の相対位相を360度変える。これは、radiation belt 内の電子・陽子の変動を、時間変動と空間変動をなるべく分離して観測するためである。ミッション期間は、2年以上を予定している。このミッションの総コスト(life-cycle cost)は$686 millionである。現レートで約550億円。

 最新のプレス・キットを参照して下さい。

[追記:2012年9月4日]
 RBSPは、予定より1週間遅れた8月30日に、無事に打ち上げられた。
by utashima | 2012-08-18 10:59 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

NASA 探査機ミッションの3Dサイト2つ

 最近公開された NASA 探査機を対象とした3D表示サイトを2つ紹介します。

(1)Eyes on the Solar System
 私は、これを半年位前に見つけた。月・惑星ミッションを遂行する探査機の出発からの trajectory を3D表示できる。木星に向っている JUNO や、月周回軌道で月重力場の観測を開始した GRAIL などの trajectory を見る事が出来る。太陽系の天体の軌道も眺められる。まだ β 版であり、これからも進化し続けると思われる。

(2)Eyes on the Earth
 こちらは、1週間程度前のNASAニュースで公開を知った。NASA の地球観測衛星の軌道を3D表示できる。それらの衛星の観測データから得られた色々な物理量(大気温度、海面高度、オゾン量、二酸化炭素量など)の Map 表示や年毎の違いなども表示できる。
by utashima | 2012-03-31 13:48 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

NASA火星探査機が遷移軌道8ヶ月間の放射線測定

 2011年12月13日のJPLからのNASAニュース 『NASA Mars-Bound Rover Begins Research in Space』で、今年11月26日に打ち上げられ火星に向かっている火星ローバーCuriosityが、火星までの8ヶ月間の宇宙機内の放射線測定を開始した事を知った。2012年8月に火星に着陸した後も、放射線の測定を続ける。

 今までの探査機では、探査機の表面かその近くで計測していた。今回は、将来の有人火星探査に備えて、宇宙船内部に居住する人間にどの程度の放射線被曝があるかを正確に見積もるようだ。先日国際宇宙ステーション(ISS)から帰還した古川宇宙飛行士は、地球周回軌道に約5.5ヵ月滞在したが、その間に地上の人間の100年分の放射線を浴びたと言われている。ISS はシールドの役目も持つ地球磁気圏内を飛行しているが、火星飛行ではシールドのない宇宙空間に長期間滞在する事になり、宇宙飛行士にどの程度の放射線が降り注ぐのか気になる所である。

[補足]
 上記の JPL サイトは、以前から Internet Explorer ではうまく動作しない事が多かった。今回も、画面がなかなか切り替わらない。私が使っているブラウザは、Lunascape 6.5.8であるが、これは、Trident(IEエンジン), Gecko(Firefoxのエンジン), Webkit(Google Chromeのエンジン) という3つのエンジンをタブ毎に切り換えて使う事ができる。Trident をデフォルトのエンジンに設定している。そこで、JPL サイトだけ Geckoエンジンに替えると、正常に表示されるようになった。
by utashima | 2011-12-14 12:33 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

隠れた物理法則(数理科学2011年7月号)

 数理科学2011年7月号は「隠れた物理法則」の特集号だった。宇宙論や素粒子論の面白い話が掲載されている。私が興味を持った記事のタイトルを以下に記す。

  「隠れた定数(暗黒エネルギー)」
  「隠された粒子と物質(素粒子物理と暗黒物質)」
  「隠れた次元(ブレーン・超弦理論)」
  「隠れていた場(ゴースト場の凝縮機構)」

 1998年に発表された Ia型超新星の観測データ等から、現在の宇宙は、約73%の暗黒エネルギーと約23%の暗黒物質と約4%の通常物質(バリオン)から成っている事が分かって来た。暗黒エネルギーは現在の宇宙を加速膨張させている事が示された。しかし、暗黒エネルギーと暗黒物質の正体は不明である。暗黒物質の候補として、超対称性粒子とアクシオン粒子が考えられている。超対称性粒子の中でも、ニュートラリーノとグラビティーノが候補。ニュートラリーノ はバリオンと僅かに相互作用するため、地上でその相互作用を観測できる可能性があり、日本でも XMASS という暗黒物質検出実験が神岡で行なわれている。ニュートラリーノが暗黒物質であれば、近い将来の検出が期待されている。グラビティーノとアクシオン はバリオンとの相互作用が小さ過ぎるため地上実験での検出は困難らしい。

 暗黒物質や暗黒エネルギーは、宇宙の観測データと一般相対性理論との不一致の説明として考えられたもの。逆の発想として、一般相対性理論の方を調整する考えもあるというのが、上記の4番目の記事である。一般相対性理論が根源としているローレンツ対称性に対し、自発的対称性の破れを導入する。そこから得られる「ゴースト場の凝縮機構」をインフレーションに適用すると、近い将来の宇宙背景輻射の観測により、このモデルの正否を判定できる可能性があるようだ。「ゴースト場の凝縮機構」は、素粒子の標準模型におけるヒッグス機構(質量の源)と似たものである。

 ローレンツ対称性に自発的対称性の破れを導入するというのは、初めて読んだ。こちらのPDF(by 佐藤勝彦氏)の49頁に、ゴースト場凝縮により、暗黒物質と暗黒エネルギーを同時に解決できるかも知れない事を示す説明図がある。
by utashima | 2011-07-29 20:42 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

TRMMオンボード軌道情報の高精度化手法

 2006年のISTS (International Symposium on Space Technology and Science) で発表された論文の中に以下のものがあった。

Stephen Bilanow, Steven Slojkowski, "TRMM ON-ORBIT PERFORMANCE REASSESSED AFTER CONTROL CHANGE," ISTS 2006-d-35.
 
この論文に、TRMM (Tropical Rainfall Measuring Mission) のオンボード軌道情報をより高精度にするための興味深い方法が記されていたので、簡単に紹介する。

 TRMMは、1997年11月に H-2ロケットにより打ち上げられた熱帯降雨観測衛星であり、日米共同ミッションである。日米の分担は以下の通りである。
    日本 : 世界初の降雨レーダーの開発、H-2ロケットによる打上げ
    米国 : 衛星の開発、衛星の運用

TRMMの運用高度は、350kmという低い高度であった。3年余りの運用の後、2001年8月に402.5kmの高度に変更された。当時私は、単に高度を約50km上げただけの事と思っていた。しかし、この論文を読んで、そうではない事を知った。姿勢制御方式も変更していた。

 高度350kmでは地球センサを使って TRMM を地球指向姿勢にしていたが、402.5km に上げると地球センサが使えず(詳細な理由は書かれていない)、地球センサを使わない制御方式に変更した。後者の方式では姿勢センサだけでは地球指向ができず、時々刻々の衛星位置情報も必要となる。2つの制御方式はかなり異なる方式であり、1つの衛星に2方式を搭載していた事を知って驚いた。理由も書いてあった。高度が低いほど原子状酸素(AO)が多く、AO により地球センサのレンズの fogging を心配していた。そのため、地球センサ無しでの姿勢制御方式もバックアップとして搭載していた。

 高度を 402.5km に上げるとバックアップの姿勢制御方式を使用する事になり、地球指向させるために、時々刻々の衛星位置情報が必要になる。TRMM は毎日 TDRS を使った軌道決定をしており、その軌道決定値(接触要素)を1日に1回、TRMM にアップロードしていた。TRMM は、J4までのzonal項、2×2までのnon-zonal項、簡易化した Jacchia Roberts 大気密度モデルを考慮した軌道伝播機能を持っている。然しながら、1日に1回のアップロードでは軌道伝播精度が不十分だった。そのため、当初は1日に2回アップロードしていた。だが、これでは運用の負担が増える。

 そこで、別の方法が考えられた。1日1回のアップロードで不十分だった理由は、地上での軌道決定(TDRS経由のデータを使用)では30×30までの地球重力モデルを使っていたにも拘らず、TRMM 内では上記のように J4までと2×2までの簡易モデルを使っていた事である。摂動モデルが異なると、一般に軌道長半径の短周期摂動量に違いが生じ、それが時間に比例する位置誤差を生じさせる。

 TRMM が採用した対策は、2つの地球重力モデルのポテンシャルが等しくなる時刻の接触要素を TRMM にアップロードする事だった。ポテンシャルが一致すれば、エネルギーを決める軌道長半径も一致するからである。しかし、最近の衛星は GPS受信機を搭載する事が多いので、地上から自分の位置を知らせて貰う必要がなくなり、TRMM のような方法は必要ないかも知れない。
by utashima | 2011-07-23 13:59 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)

最近の静止衛星打上げ時の分離軌道

 最近の静止衛星は、どのような軌道でロケットから分離されているのか、簡単にネット検索してみた。

 2010年4月25日にプロトン-Breeze-M ロケットは、SES-1 静止衛星を、打上げから約9時間後に静止軌道に近い軌道で分離していた。分離軌道は、以下の通り。
   近地点高度:28,199km  遠地点高度:33,670 km  傾斜角:0.6°
軌道情報はこのサイトから入手した。

2010年1月27日に同じくプロトン-Breeze-Mで打ち上げられた RADUGA 1M-2 (ロシアの軍事衛星) は、より静止軌道に近い軌道に投入されていた。
   33,956 x 35,568 km, 0.3°
軌道情報はこちらのサイトから入手した。

 衛星質量が大きい場合は、例えば5000km×36000km(傾斜角10deg程度)などの GTO と GEO の中間付近の軌道で分離している。DELTA-Ⅳ やアトラスV による静止衛星打上げでも、5000km×36000km(傾斜角10deg程度)などの軌道に投入している例があった。

 以下の値は、2010年4月4日にアメリカが DELTA-Ⅳで GOES-15 を静止軌道に打ち上げた時のロケット分離軌道である。
   6,601 x 35,161 km, 13.2°  
軌道情報はこちらのサイトから入手した。

 何度も噴射できる高性能の上段ステージがあれば、ユーザーが希望する運用軌道に近い軌道において衛星を分離する事ができ、衛星側の負担が軽減される。
by utashima | 2010-07-18 12:11 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)