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『人類の住む宇宙』を読んだ

『人類の住む宇宙』を読んだ_c0011875_2229289.jpg ウォーキング途中に立ち寄った書店で、『シリーズ現代天文学Ⅰ 人類の住む宇宙』 (日本評論社、2007年1月発行)を見つけ、早速購入して読んだ。全17巻シリーズの開始である。できれば、全巻読んでみたいと思っている。これは、日本天文学会の創立100周年記念出版事業である。「シリーズ刊行によせて」では、「第一線の研究者が、天文学の基礎を解説すると共に、自らの体験を含めた最新の研究成果を語ります」と書かれている。この第1巻はシリーズ全巻への導入部という事で、幅広い分野の内容が書かれている。

 第1章では「現代宇宙観までの道のり」と題して、天文学の歴史に触れられている。

 第2章の最後に、「宇宙における距離の測定」について概要が書かれている。詳細は、シリーズの第4巻に述べられるらしい。天文学では、色々な方法を使って、遠くの天体までの距離を測っている。太陽と地球の距離は、地球と惑星の距離をレーダーで計測したり、惑星探査機に対するドップラ観測などにより、精度良く決められている。太陽系外の星までの距離を測る方法で最も信頼できるのは、年周視差法である。地球の公転運動を利用した三角測量である。地上からでは方向の精度が悪いので、ESA (欧州宇宙機関) は 1989年に世界で初めて恒星の位置を計測するための衛星ヒッパルコスを打ち上げた。その結果、9等より明るい星に対して 1ミリ秒角(1mas) の誤差で年周視差を求めた。その結果、100pc (約326光年) までの9等より明るい星の距離が正確に判った。約300光年より遠くの星までの距離は、別の方法で推定されているが、幾つかの仮定が含まれており、年周視差法に比べると精度は劣る。そのため、300光年よりも更に遠くの星までの距離を測るための位置天文衛星が幾つか検討されている。この本には書かれていないが、ESA が進めている GAIA 計画、日本の国立天文台と JAXA が検討している JASMINE 計画、アメリカが進めている SIM 計画などが、これに相当する。

 第3章では、「元素の起源」というタイトルで、宇宙誕生から、どこでどのようにして、どんな元素が作られてきたかが述べられている。

 第4章は「太陽系と系外惑星系」。太陽系の現状、起源論、系外惑星系の発見とその方法などが述べられている。小惑星サンプルリターン計画(はやぶさ)や小惑星イトカワの話にも触れられている。

 第5章では、「地球と人間」というタイトルで、気象現象、自然災害、地球環境と人間活動、地球温暖化についても書かれている。地球温暖化については、つい最近の IPCC 第4次報告書に基づいた説明もある。1975年頃以降の温暖化は、自然の影響のみでは説明できず、人為影響が大きい事を示している。少し前の新聞記事で、「温暖化は人間活動の影響が支配的である」という内容のものを読んだ記憶がある。しかし、私にはまだ完全には納得できない部分もあり、ネットで少し調べてみた。これについては、別の記事として投稿する予定。

 第6章は 「時と暦」。1714年にイギリスで、海上の船の位置をそれまでよりも正確に決める方法を開発したものに、達成した精度に応じて賞金を与えるという法律ができ、1759年に時計職人のジョン・ハリソンがクロノメータを発明して賞金を得た。開発が要請されて55年後に実現している。昔はゆっくりと時が流れていたようだ。閏秒の話もあり、UTC と TAI の差のグラフが掲載されている。1999年頃までの数十年間は毎年のように閏秒が挿入されていたが、1999年頃から2006年頃まで、閏秒がなかった。原因は何だろうと気になる。この本には何も記されていない。地球内部の外核の運動に変化が生じているのか。そういえば、最近は地磁気も弱くなりつつあると何かで読んだ事がある。このサイトに、数十年周期の自転角速度の変動は、まだ良く判っていないが、地球磁場変動と関係があるかも知れないと書かれている。やはりそうかと思った。
by utashima | 2007-03-17 22:22 | 読書 | Trackback | Comments(7)
Commented by みーや★ at 2007-03-22 11:53 x
>年周視差法
ボイジャーやパイオニア、その他の探査機を使用しての測位は可能なのでしょうか?
Commented by utashima at 2007-03-22 21:14
数百 AU 離れた宇宙機を利用すれば、基線長が 2 桁大きくなるので、三角測量の精度は向上するでしょう。例えば、ヒッパルコスを地球近傍と、太陽から数百 AU 離れた所の2ヶ所で使うと、GAIA や JASMINE の要求する精度が実現できる気がします。しかし、この種の観測には大量の星像データが必要のようなので、地球に送るのは殆ど不可能と思われます。機上で処理するには、計算量が膨大のようです。GAIA は太陽-地球系のL2点で観測するのですが、地球との間に数 Mbps のデータ・リンクが必要と言われています。という事で、現時点では、不可能という事になると思います。
Commented by みーや★ at 2007-03-23 11:52 x
なるほど、ありがとうございます。
見ることはできても伝送路が弱いのですね。
Commented by hirota at 2007-03-26 11:08 x
>年周視差法
基線を長くすると周期も長くなっちゃうからなー (地球だから 1年で済む)
何百年も待つうちに別の方法で測定が終わってるのでは?
(space VLBI なら 1周待つ必要はないが)
Commented by みーや★ at 2007-03-26 11:36 x
離れたところを飛んでいる2機以上の探査機を使えばいいので、特に公転軌道を半周する必要は無いと思っているのですが、あってますよね?
地球が半年待つ必要があるのは、三角測量の基線を最長とするためですよね?
Commented by utashima at 2007-03-26 17:21
私も、みーや★さんと同じように考えています。地球近傍にも1機を配置するとしたのは、そのためです。でも、数百年は掛からなくても、数十年は必要となりますね。
Commented by hirota at 2007-03-27 12:52 x
地球近傍に戻ってきたときにデータ伝送すれば、なんとかなるのでは?
そして、スイングバイで違う遠日点方向に飛ばせば倍の距離を稼げる。(時間も倍かかるが)


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