既に記した記事で紹介した月刊雑誌『科学』の 2006年10月号の特集「物理を変える!光科学の挑戦」に、最近の高出力レーザーの話が載っている。この記事を読むまでは、最近はレーザーに関して大した進歩はないと思っていた。ところが違っていた。以下は、植田憲一氏(電気通信大学レーザー新世代研究センター)による記事の概要である。
現在、高出力レーザーとして
セラミック・レーザーが大きな注目を集めている。そのセラミック・レーザーの技術を牽引しているのは、日本だという。
セラミック・レーザーの発展のきっかけになったのは、重力波検出器の研究らしい。10の-20何乗という微弱な信号を検出するために、それまでのレーザーの改善点を検討した結果、超高安定のセラミック・レーザーの開発に繋がった。セラミックスは日本が得意とするもの。
セラミック・レーザーは、安定度、効率、出力などにおいて、今までのレーザーを大きく上回る性能を実現しているらしい。これを知った米国は、日本からセラミック・レーザー試料を多数購入して試験し、日本からの研究報告を追認している(2005年)。そして、軍用の大型固体レーザーの開発を開始。100kW 出力も目前らしい。
大阪大学レーザー研究所は、セラミック・レーザーを使い、日本発の新しいレーザー核融合方式により研究を進めている。
「4年後には世界に先駆けて科学実証に成功するだろう」と述べている。
この特集には他にも、将来、
18 桁の時間計測を可能にする「光格子時計」の記事もある(香取秀俊氏(東京大学)による)。この「光格子時計」が実現すると、高度差 1cmの 2つの時計の時間刻みの差(一般相対論で説明できる)が検出できるらしい。このような超高精度の時計ができると、
物理定数が本当に不変なのかにも決着が付くかも知れないようだ。「光格子時計」のアイデアは、香取秀俊氏たちが 2001年に提案している。