Eye Ball 衛星の、待機軌道から母衛星への移行軌道の最適化を、連続推力を使う最短時間問題として解く事にした。最小原理による定式化を使用した。運動方程式は、線形化された相対運動方程式 (Hill の方程式) を使った。状態量の初期値と終端値は完全に指定した。
最小原理で解くには、ハミルトニアン H と随伴ベクトル
λ を導入する。ハミルトニアンを使って、随伴ベクトルが満たすべき随伴微分方程式を定義する。一般には、随伴微分方程式は解析的には解けないが、今の問題では、運動方程式が線型であるため、簡単に解析的に解く事ができる。勿論、随伴ベクトルの次元数だけの積分定数は未知である。更に、移行に要する時間(移行時間)も未知数である。状態量の終端値が全て指定されているため、
λ の終端値は自由である。ハミルトニアンは終端値が -1 という条件を満たす必要がある。
結局、随伴ベクトルの積分定数と移行時間を、状態量の終端条件とハミルトニアンの終端条件を満たすように求める問題となる。その際、運動方程式を数値積分するが、
最適な推力加速度の方向は、速度に対する随伴ベクトルの逆方向であり、最適な加速度の大きさは許容される最大値である事が最小原理から導かれる。なお、随伴微分方程式は斉次の線型方程式であるため、解の定数倍も解となっている。よって、随伴ベクトルの積分定数の一つの値を 1 等に固定し、ハミルトニアンの終端条件は使わずに解く事ができる。
この問題では、Eye Ball 衛星は母衛星と同じ軌道面内を運動する場合に限ったので、2次元の問題とした。
速度に対する随伴ベクトル λv が最も重要な働きをする。それを以下に示す。c0, c1, c2, ε が未知の積分定数である。n は母衛星の平均運動である。
λv の運動は、第1項の楕円に沿った右回りの運動と、第2項の
λ5軸方向(図4.2 参照)の等速直線運動が合わさったものである。更に、初期時刻 t0 及び終端時刻 tf 付近の
λv の方向は、
『Eye Ball 衛星の trajectory 最適制御(1)』の図3.2 に描いた2つの ΔV 方向の逆方向に近いと考えられるので、この場合の
λv の動きは図4.2 のように見積もる事ができる。
c2=1 として、図4.2 を利用すると、c0, c1, ε の妥当な初期値を設定する事ができる。この初期値を使い、微分修正法を適用すると、5 回の iteration で解を得る事ができた。図4.6 が trajectory を、図4.8 が推力方向を示す。図4.8 より、移行の中間で大きな推力方向変化が必要である事が判る。
これらは、以下の資料にまとめた。
歌島, "Eye Ball 衛星の最適制御(その1)," GAA-97013, 1997年11月.
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Eye Ball 衛星の trajectory 最適制御(3) に続く・・・。 ***