人気ブログランキング | 話題のタグを見る

イオとエンケラドスの離心率

 土星の第二衛星のエンケラドスは、内部が高温になっている事が分かった、との報道を3月19日の朝刊で読んだ。その記事では、「ただ、熱水活動のもとになる熱源は、よくわかっていない。研究チームは『潮汐(ちょうせき)による加熱』を挙げる。土星を周回するエンケラドスの軌道はゆがみが大きい。土星との距離に応じて衛星全体が変形を繰り返し、内部の物質の摩擦が起きて熱が生じる仕組みだ。だが、十分には解明されていないとも説明する。」と書かれていた。

 この記事を読んで2006年版と2012年版の理科年表を調べた。エンケラドスの離心率は0.004位の値だった。これを「ゆがみが大きい」と表現する事に違和感を持った。地球観測衛星の軌道離心率は、大抵0.001程度。その4倍だから大きいと言えば言えなくもないが、私はどちらも1/1000のオーダーであり、「僅かに歪んでいる」程度と感じた。

 この時、木星の第一衛星のイオの離心率が気になった。イオは、潮汐加熱のために今でも火山噴火している事で有名。上記の2つの理科年表で見ると、何と0.0000。これが正しいとすると、ゆがみが無くても内部が過熱する事になる。そこで、ネットで調べてみると、こちらの資料に、潮汐加熱量は離心率の2乗に比例する事が述べられている。

 そこで、最新版(2015年版)の理科年表を調べてみた。そこでは、イオは0.004位で、エンケラドスは0.0000だった。イオの値は最新版が正しく、2006年版と2012年版は誤っていると考えた。エンケラドスは、逆に、以前の版の値が正しく、最新版は誤りだろうと思った。

 ここまで調べて、理科年表の出版社である丸善(株)に問い合わせた。天文台に問い合わせて頂き、「エンケラドスの最新版の値(0.0000)は不適切であり、0.004位の値が適切である。」との返事を教えて頂いた。結局、どちらの衛星も離心率は0.004位という事に落ち着いた。

[追記(2015年12月7日)]
 2016年版の理科年表を見たが、エンケラドスの離心率は、不適切な0.0000のままであった。
by utashima | 2015-03-28 19:03 | 宇宙開発トピックス | Trackback | Comments(0)


<< ウイスキーの飲み比べ(4) ウイスキーの飲み比べ(3) >>