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惑星ミッション用上段ロケットの検討  1996年
 今日(2005年5月3日)のNASAのニュースに次の火星ミッション Mars Reconnaissance Orbiter (MRO) の事が載っていた。打上げは2005年8月を予定。今までは、Delta-Ⅱロケットが使われていたが、今回は Atlas V が使われる。地球と火星の位置関係から大きなΔVが必要な事と、MRO 自体が大型化している事が理由。以下に、MRO を、過去の NASA の火星ミッションと比較してみる。以下の図はNASAのHPのもの。

Mars Global Surveyor (1996年11月打上げ)
   打上げ時の質量:767kg (約半分は燃料)
Mars Odyssey (2001年4月打上げ)
   打上げ時の質量:758kg (約半分は燃料)
Mars Exploration Rovers (Spirit & Opportunity, 2003年6月と7月打上げ)
   打上げ時の質量:1063kg
   ローバー質量:185kg
Mars Reconnaissance Orbiter (2005年8月打上げ予定)
   打上げ時質量:2180kg

 MRO は、Optical Navigation Camera を搭載する。DS-1 に搭載されたものと同じかどうかは未確認。その目的は、火星到着の約1ヶ月前から、火星の衛星であるフォボスとダイモスを、恒星を背景に観測して、自分の位置を高精度に知る事である。MRO には必要はないとの事であるが、将来の火星ランダーのピンポイント着陸に備えて実証しておくようだ。

 Mars Global Surveyor が打ち上げられた1996年頃、惑星ミッション用の上段ロケットとして、どの程度の推力のものを開発しておくべきかを検討した。惑星への遷移軌道上の宇宙機質量として、200kg~1000kgを対象とした。NASA は MRO で既に 2000kg 級を火星への遷移軌道に上げようとしているが、日本としては、まだ1000kg程度までで十分ではないかと思われる。

 検討に際して、重力損失(1%以下)と最大加速度(3G以下)に制約を課して、上段ロケットの望ましい推力範囲を検討した。推進系としては、液酸液水系(比推力450秒)と二液式推進系(比推力320秒)を想定した。上段ロケットの構造効率は、0.85を使用。以下の結果を得た。

火星ミッション、液酸液水エンジン使用の場合
 遷移軌道上の宇宙機質量が 600kg~1000kgの探査機に対して、1.7ton~2.3tonの推力のエンジン一つで対応できる。上段ロケットと宇宙機の質量和は、以下の通り。
   宇宙機質量  上段ロケット(燃料込み)+宇宙機質量
     600kg         1739kg
     800kg         2319kg
    1000kg         2898kg

 H2A ロケットを使えば、1000kg 級の火星ミッションを3機同時に打ち上げられる。しかし、Delta-Ⅱクラスのロケットに上段ロケットと宇宙機を乗せて打ち上げるのがベストであろう。

火星ミッション、二液式エンジン使用の場合
 遷移軌道上の宇宙機質量が 600kg~1000kgの探査機に対して、2.6ton~2.9tonの推力のエンジン一つで対応できる。上段ロケットと宇宙機の質量和は、以下の通り。
   宇宙機質量  上段ロケット(燃料込み)+宇宙機質量
     600kg         3027kg
     800kg         4035kg
    1000kg         5044kg

木星ミッション、液酸液水エンジン使用の場合
 最大加速度3Gの推力でも重力損失は1.25%になる。従って、最大加速度3Gと重力損失1.25%の制約の下では、1つの推力のエンジンで 600kg~1000kgの探査機に対応する事はできない。宇宙機質量に対する、上段ロケット+宇宙機質量、推力は、以下の通り。
   宇宙機質量  上段ロケット(燃料込み)+宇宙機質量   推力
     600kg         5670kg              4.1ton
     800kg         7560kg              5.3ton
    1000kg         9450kg              6.8ton

木星ミッション、二液式エンジン使用の場合
 構造効率0.85の上段エンジンでは、木星への遷移軌道に投入する事はできない。比推力が低い推進系では、2段式の上段ロケットにする必要がある。記事『ユリシーズ型太陽極軌道への軌道設計(1)』を参照。

 以上の検討から、火星ミッションを想定すると、約2ton推力の液酸液水エンジンの上段ロケットが魅力的である。以下の資料にまとめた。
歌島, "惑星ミッション用上段ロケットの推力," GAS-96027, 1996年7月.
by utashima | 2005-05-03 16:08 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(2)
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Commented by ブリザド at 2005-05-05 19:57 x
う~ん、私は輸送系が専門じゃないんで、いい加減な意見なんですが、惑星探査用の上段ロケットって、フェアリング内に探査機と一緒に搭載されるタイプが多いですよね。で、その場合、「フェアリング内に収納するタイプの上段ロケットに液酸液水」って問題ないですかね...(^◇^;)

つまり、打上げ前の液酸液水の補給や気化した酸素,水素の放出をフェアリング越しにできるのかな~なんて^^;  あ、そういえば、以前はシャトルに搭載予定だったセントール上段は液酸液水だったか....(爆)
Commented by utashima at 2005-05-05 22:03
今、土星の周りを飛んでいるカッシーニは、Titan IVB/ Centaurで打ち上げられました。その時の NASA の Press Kit を見ると、セントール上段はフェアリングの中に入っていますね。この件については、言われるまでは気が付きませんでした。何とかなるんですかね。
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