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L5点から見た地球の観測等級  1999年

 L5点にいる宇宙機に搭載したスタートラッカー(恒星センサー)を使い、恒星を背景にして地球を捉える事ができるかを検討するため、その条件では地球が何等星として観測されるかを調べた。中野主一氏の『パソコン天文講座 天体の軌道計算』(誠文堂新光社、1992年)に小惑星の観測等級を計算する式 (小惑星の光学式) が載っている。この式を使って地球の観測等級を推定した。先ず、地球から見た火星の観測等級を調べて、火星の絶対等級を求めた。次に、火星と地球のアルベドの違いと半径の違いを考慮して、地球の絶対等級を見積もった。そして、光学式を使って、地球の観測等級を得た。

 理科年表によると、火星の極大光度は-3.0等級である。これは、火星が地球に大接近した時の値と考えられる。その時の位置関係から、光学式を用いて、火星の絶対等級は-1.598等級と得られた。

 理科年表によると、火星の反射能は0.16、地球のそれは0.3であるから、地球は火星の1.875倍の反射能を持つ。一方、火星の半径は3397km、地球の半径は6378kmなので、地球の断面積は火星の3.53倍である。以上より、地球の絶対光度は、火星のそれの約6.62倍と推定できる。これから、地球の絶対等級を-3.65等級と推定した。これを光学式に代入すると、L5点から見た地球の観測等級は、約-1.8等級となった。

 想定したスタートラッカーのダイナミック・レンジは、約6.5等級であった。例えば、1等級から7.5等級まで観測できる。最も明るい地球の約-2等級を一端とすると、暗い星は4.5等級までのものしか観測できない事になる。地球を恒星センサーの視野中心においた時、スタートラッカーの視野内にいつも4.5等級以上の明るい恒星が2個以上存在するかを 関口 毅 氏に調べて頂いたところ、存在しない事が判った。

 以上の事から、1つの恒星センサーを地球を見る光学航法センサーとしても流用する事は困難と言える。恒星センサーの質量は、数kgと軽いので、もう一つ地球方向を観測する専用の恒星センサーを搭載する事が考えられる。このセンサーには、地球の像が入る中心部だけCCDの上に減光フィルターを貼り付けておき、地球からの光が2等級程度に落ちるようにしておく。そうすると、地球と複数の恒星を同じ視野に捉える事が可能となろう。この減光フィルターのアイデアは、ブリザド さんによる。
by utashima | 2005-05-01 11:46 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)


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