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『津波災害--減災社会を築く』(岩波新書、河田惠昭著) 

 3月11日の東日本大震災後の4月2日に、近所の書店でこの本を見つけた。出版は僅か数ヶ月前。「まえがき」によると、2010年2月27日に発生したチリ沖地震津波がきっかけとなった。その地震の時、我が国で168万人に対して避難指示・避難勧告が出されたが、実際に避難した人は、3.8%に過ぎなかった。避難率の低さに著者は危機感を募らせた。そして、この本ができた。

 この本を読んで、印象に残った内容を以下に記す。

(1)南海地震で発生した津波が紀伊水道を北上する時、東西の和歌山県と徳島県では津波の多重反射が起きる。そのため、約20分毎に津波が来る。豊後水道でも同様である。

(2)1983年に発生した日本海中部地震では、日本海沿岸で多重反射し、1日以上津波が減衰せず沿岸各地に来襲した。

(3)根室沖・十勝沖では、巨大津波が過去7000年間に平均500年間隔で発生したことが分かってきた。前回起こったのは、17世紀である。

(4)シアトルとバンクーバーを結ぶ沿岸域では、500年周期でカスケーディア地震による大津波が7回も襲った事が最近、判明した。前回は1700年1月26日に地震が起こった事が我が国の古文書や数値解析から明らかになった。当時は、先住民が住んでいただけであった。これらの沿岸域は危険期に入っており、米国・カナダ政府は、大慌てで対策を講じている最中。

(5)明治三陸大津波(死者が約2.2万人、1896年6月15日発生)と、その37年後に起こった昭和三陸津波(死者が約3000人、1933年3月3日発生)は、津波災害の恐ろしさと歴史的に繰り返すという事を我々に教えてくれた災害である。

(6)高さ5mの津波は、5mの海岸護岸に衝突すると、7.5m近い高さに盛り上がり、海岸護岸を容易に乗り越える。

(7)我が国の太平洋沿岸に震源があるプレート境界地震による津波では、大きな波高が6時間継続する。

(8)津波にも屈折と回折という現象がある。津波は、海底の等深線に直角に進もうとする。深い海域では伝播速度が大きいため。そのため、島や半島、岬に大きな津波が集中する。回折により、島の裏側にも津波が押し寄せる。

(9)南海地震は、684年以来、8回起こった事が確認されている。最長150年間隔で南海地震が発生している。

(10)地震マグニチュードが6.0以下、或いは震源の深さが100kmより深ければ、被害をもたらすような津波は発生しないと考えて良いようだ。

(11)東京湾臨海コンビナートには、貯蔵量が500キロリットル以上で、耐震診断を未受診或いは耐震補強未施工のタンクが約1800基ある。石油タンクの耐震化が遅々として進んでいない。

(12)湾口の大水深部に津波防波堤を作るのが一番効果的。釜石市や大船渡市は際立って安全になっている。と書かれているが、今回のマグニチュード9.0の東日本大地震から、これらの地域を守る事は出来なかった。

(13)最近開発されたGPS津波計は1基1億円以上するが、近地津波の波源域に設置すれば、いち早く津波の来襲を知らせてくれる。これを100基程度、プレート境界に沿った沿岸域に設置すれば、津波減災効果は一段と高くなる。

 この記事を書いている今も、つくば市では、震度4~5弱の余震が連日のように襲っている。数百年間隔で必ず襲って来る大地震・津波に対して、被害を最小限に留める日本を作りたい。
by utashima | 2011-04-12 23:39 | 読書 | Trackback(1) | Comments(0)
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