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マスドライバによる月資源のL4点への輸送問題  1993年

 1993年頃、未来工学研究所に作られたある研究会で、月資源を地球-月系のL4点に輸送して利用する事が検討されていた。どんな事に利用する検討だったかは忘れてしまったが。月からL4点への輸送には、マスドライバを使用する事を考えていた。NASDAの上の人を経由して、この輸送問題の検討依頼が来た。地球-月系のL4点というと、1969年にジェラルド・オニール博士らがスペース・コロニーの設置場所として提唱した場所である。面白そうなので、検討させて頂く事になった。

 初めの解析では、月赤道から水平方向にマスドライバで打ち出すとした。解析的検討の後、地球と太陽の重力も考慮した数値積分も行なった。マスドライバの打ち出し速度は2400m/s弱が要求され、L4点到着時には100m/s前後の減速が必要になる。ここまでの結果を以下の資料にまとめた。
歌島, "マスドライバによる月資源のL4点への輸送の検討," HE-93021, 1993年3月.

マスドライバによる月資源のL4点への輸送問題  1993年_c0011875_2283314.jpg
 次に、L4点到着時の速度(回転系に対する)が最小となる輸送経路を見つけるため、L4点からの逆行積分を使用して検討した。その結果、月の裏側から水平方向に打ち出すと、L4到着時の速度が最小となる事が判った。約77m/sである。しかし、月の裏側は地球との通信に問題がある。別途、月裏側との通信を可能にする通信衛星システムを構築すれば問題は小さくなろう。月表側の中心付近から打ち出すと、L4到着速度は80.5m/sであるが、月表面から真上方向に打ち出す必要があり、マスドライバでは無理。地球から見て月の左側付近から打ち出せば、マスドライバの打ち出し上下角は比較的小さくできるが、L4到着時の速度は120m/s付近まで大きくなる。

 L4到着時の速度が120m/sの場合に対して、H2ロケットの第二段をベースとした捕獲宇宙機を考え、何トンの資源を捕獲できるかを検討した。1回に約100トンを捕獲できる結果となった。この逆行積分による検討は、以下の資料にまとめた。
歌島, "円制限3体問題の逆行積分によるマスドライバ解析とL4点での捕獲時の燃料解析," HE-93025,1993年4月.

by utashima | 2005-03-19 17:38 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)


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