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宇宙機軌道要素の座標系

 宇宙機の軌道要素(例えば、ケプラー軌道要素など)は、Epoch と、基準とする座標系を明示する必要がある。地球周回の宇宙機の場合、赤道面座標系が使われる。しかし、赤道面は、太陽や月からの潮汐力により変化しており、基準方向として使用される春分点方向(赤道面と黄道面の交線方向)も、変化している。これらの変化の主なものは、歳差と章動である。これについては、こちらのサイトを参照して下さい。従って、いつの時点の赤道面か等を指定しないと座標系が定まらない。私が NASDA の追跡部門にいた頃は、1950年mean と称した座標系が慣性座標系として使われていた。これは名前の通り1950年の赤道面を基準とした座標系である。現在は、これに代わって、Mean of J2000.0 赤道面座標系(2000年における平均赤道面,平均春分点を基準とする座標系)が使われている。これを以下では、J2000系と記す。ここの平均の意味は、歳差は考慮しているが、周期の短い変動である章動は考慮していないという事である。こちらのサイトも参照。

 では、慣性系である J2000系だけで良いかというとそうではない。運動方程式の積分に際し、慣性系が必要なため、J2000系などが使われるが、あるミッション宇宙機の軌道を設計し、その軌道の傾斜角は95.5度である等という時、その基準座標系は J2000系のような過去の時点の慣性系ではなく、その軌道の実現を想定する日時における赤道面座標系であるのが自然である。この座標系を True of Date 座標系と呼んでいる。その時点の歳差と章動を考慮している。従って、私が追跡部門にいた頃、1950年meanは普段は表に出る事はなく、True of Date系での軌道要素が基本であった。最近、天文関係で、国際天球座標系というものが制定されている。これは、赤道面などを基準にしたものでなく、銀河系外の電波星を基準としたもの。その赤道面及び赤経の原点は、J2000系の平均赤道面及び平均春分点とほぼ一致している。これは、従来の慣性系の定義を赤道に依存しないで決定しようというもので、自然な流れと考えられるが、これを基準に地球周回の宇宙機の軌道要素を表現しても、不便である。

 以上が、地球周回の宇宙機軌道要素に対する私の理解である。以前から STK 等の市販のソフトを使っているが、最近気になる事がある。STK の Orbit Wizard で軌道設計し、軌道要素画面を表示してみると、デフォルトの座標系が J2000系となっている事に、恥ずかしながら最近気付いた。 現在は2009年で J2000系の年から9年程度しか経ていないが、太陽同期軌道で J2000系と True of Date系で軌道傾斜角を比較すると、約0.03度の違いがある。概念設計レベルでは、この違いは大きな影響を与えないが、小数点以下2桁目で違うのは気になる。なお、STK でのこの画面では、True of Date 系の選択はできず、それに近い TEME of Date というものが選択できる。これは、基準面は True of Date系に一致するが、基準方向は章動を考慮していないものである(STK のヘルプに記述がある)。

 では、オープンソースで GSFC 等が開発を進めている GMAT ではどうなっているかを調べると、J2000系、黄道面座標系、地球固定系の3つしか選択できない。GMAT の数学ドキュメントには、True of Date系の事も記されており、今のβ版から正式版に進むまでに、True of Date系も選択できる事、というより、それがデフォルトになる事を期待したい。

 以上、STK と GMAT を例に、宇宙機の軌道要素表示画面における基準座標系について議論してきたが、このようなソフトの軌道要素表示のための座標系は True of Date系がベストと思って来た私は、間違っているのだろうか。
by utashima | 2009-02-11 11:19 | 宇宙機の軌道設計/ 解析 | Trackback | Comments(0)
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